大阪府耳鼻咽喉科医会では、昭和56年から毎年、日本耳鼻咽喉科学会大阪府地方部会の協力を得て
疾病構造調査を実施しています。近年我が国では人口の高齢化と幼少児の減少が進んでいます。
この人口構成の変化が耳鼻咽喉科患者の受診動態にも現れてきており、この調査分析が将来の耳鼻咽喉科医療の対策に
寄与するものと考えています。
平成23年10月21日(金)に大阪府下の耳鼻咽喉科全診療所と大学病院を含む全病院を対象として、
第32回疾病構造調査を実施しましたのでその概略を報告いたします。
調査依頼数は565件、有効回答数は279件で回答率は約49%で、全患者数は21584人でした。
年齢構成は昨年同様、70歳以上の高齢者の割合が最も多く、次いで0~4歳、5~9歳の順に多く、青年層は少なく、60歳以上で急増しています。(図1)
疾患の部位別分類では鼻・副鼻腔が46%と最も多く次いで耳、口腔・咽頭、喉頭の順でした。(図2)
疾患別分類では急性炎症、慢性炎症、アレルギー、機能性疾患の順です。(図3)
疾患別の年齢分布では、急性中耳炎、急性咽頭炎などに代表される急性炎症では、0~4歳が圧倒的に多く次いで5~9歳が多くなっています。10歳以上では少なくなっています。(図4)
これに対し、慢性副鼻腔炎や慢性中耳炎に代表される慢性炎症は60歳代から急増し、70歳以上が40%以上を占めます。(図5)
アレルギー性鼻炎で代表されるアレルギー性疾患は5~14歳の学童期特に多く、さらに高齢者の割合が多くなっています。(図6)
難聴やめまいなどで代表される機能性疾患は70歳以上が多く40%以上を占めました。(図7)
新生物とは主に頭頸部に発生する悪性腫瘍、たとえば喉頭がん、舌がんなどを示しますが、55歳以上で急増し、70歳以上が最も多くなっています。(図8)
耳鼻咽喉科については、以前は副鼻腔炎や中耳炎などの炎症性疾患を扱う診療科とのイメージがありました。疾病構造調査から読み解かれることは、現代の快適な生活をおびやかすアレルギー性疾患や現代社会のストレスに起因するめまい、難聴などの機能性疾患も次第に増加していることです。さらには頭頸部領域のガンを治療する外科の一領域であることも再認識されます。多彩な疾患を取り扱う耳鼻咽喉科の特徴が表れる結果となっています。